第29回 2011年2月

総評
オリオン座
 身心の相即願う初日かな  利涼
 心を立てようとすればまず身を立てる。腰骨竪立。腰を立て、肩、胸をゆるめアゴを引く。立腰(りつよう)すれば自然に人は集中、持続し身心に鋭気が満ちてくる。身心一如。元気明朗、やる気が充満する。世のため人のため、物我一如。この新しい年も身心相即、力いっぱい身を捧げたいと初日の出に手を合わせ祈ったことである。
*相即(そうそく):仏語。事物の働きが自在に助け合い融け合っていること
*立腰:立腰は二本足で立ち行動する人間の最基本姿勢。

 息白し赤き帽子の登校す  露徒
 赤と白。色彩対比が鮮烈。単純化に成功し景を浮かびあがらせて秀逸。

 夜半より傘に音する雪となり  文福
 「音」に一句の重い存在感。音といえば<木枯の果てはありけり海の音 池西言水>

 もののけも集う家なり小正月  緑舟
 妖怪、赤鬼、青鬼だけでない、ばけもの、死霊も繭玉や餅の花を提げて小正月にやってくる。普通の人も無論大勢来る。作者の家はよほど陽気で風通しのいい梁山泊家のような家なのだろう。
提案座
冬の朝白く輝く銀世界
 素直で好感の持てる句です。「俳句は写生」ともいい、見たものをそのまま表現すればいい。その点で言えば、一面に白く輝く銀世界を見た、ということで完結しており、手直しのしようがない。しかし、それ以上の感動やせっかくの驚きが伝わらない。なぜか、それは誰もが思いつきそうだから。また、銀世界は冬であり、白く輝くのもの、なので「銀世界」の一言でこれらは充分予想がつき17文字の中では重複し、もったいない。その銀世界の何処に感動したのか、もう少し観察眼を働かせるとオリジナリティが間違いなく出てきます。銀世界の何かがあなたの心に感動を与えたはず。それを表現してほしいのです。俳句のおもしろさはそこにあります。
<雪しんしん見知らぬ町となりゆけり 斉藤亜昭禎>
<いざゆかん雪見にころぶところまで 芭蕉>

秀句三選

入選七句

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