第45回 2012年5月

句評     村野 太虚
島薄暑壱岐に伏したる巡検使  露徒
 奥の細道の謎の同行者、河合曽良のこと。壱岐の島へ上陸したら小さな曽良の墓があった。ああ、ここを曽良は終焉の地としたのだ。島は今初夏のやや汗ばむほどの暑さである。
 芭蕉の旅の忠実な俳諧同行者でありながら地理学者であり吉川神道や幕府の魚豪商の杉風をつうじて幕閣とつながりをもっていた曾良は、奥の細道の起案者であり芭蕉愛弟子の路通を排して六百里の同行者に選ばれた。山中温泉でわかれ、大垣でまた芭蕉とわかれた曾良は <行き行きて倒れ伏すとも萩の原 曾良> 芭蕉との死別後も数奇な人生を辿る。西国巡検で北九州へ。その第一に壱岐の島へわたりそこで果てた。幕府から巨額(250両)の資金供与を得ていながら、その墓が意外に小さいことも謎の裏方人生に興味がわくところ。
梅雨4句
  • 遠足や路端雨待つ苗代か  利涼
     遠足の路端に苗代たちが雨を望んでいて涼しげな風情。。
  • 梅雨に入る金環日食かくれんぼ  桜
  • ボンボンと逆さバケツの梅雨太鼓  耕泉
     まさしくボンボンという音の太鼓がなっているに違いない。
  • 蛇目傘差してたたんで走り梅雨  空飛
     作者も走り梅雨と走っている。傘をたたんだらすぐ降りやんだ走り梅雨。

 天近く泰山木の白き花  文福
  泰山木→初夏、白色で芳香のある6~12弁の大輪花を開く。モクレン科の常緑高木。高さ約10メートル。北アメリカ原産。葉は革質で長楕円形。表面光沢がある。どっしりとしたあの大花にめぐりあえたところが天に近い山頂付近だった。純白の大花は山にこそふさわしい。その出会いは至福。ことに天頂にさいていたのだからまさに <ロダンの花えたり>。
 <天近く>の措辞がいい。わがマンションの庭園にも植えられていたが陽あたり悪くショボイものでその名を汚すので伐られてしまった。

秀句三選

入選七句

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