第86回 2015年10月

句評     村野 太虚
逆立ちて稲荷神社の竹箒  穭
  大焚火の枯葉を掃き集めたか、稲荷神社の竹垣に箒が逆さにたててある。竹箒はさかさに立て掛けてあるのは至極おさまりがいい。いかにも仕事一服の光景か。


    秋という言葉には季節を現わす意味のほかに「もののあわれは秋こそまされ」と古人のいったように、あわれとか 衰え とかいう意味も付属してくるようである。 (石原八束)

ねころべば鼻のあたりに秋桜  三郎
  昭和記念公園へゆくと◎◎万本のコスモスが群棲している。コスモスは1,5メートルの高さというから鼻よりもすこし高いが、コスモス畑へゴロンとねころべば秋桜がゆらゆらと追想をふくらませてくれる。
秋ふかしス―ツでも行く道後の湯  秋水
  道後温泉といえばボッチャンかと古いイメージが先行するがここをス―ツでゆくというのは俳句としてカッコイイ。
畦道に無言のサギと秋惜しむ  風水
  サギは喋りはしない。黙って風水さんと秋を惜しんでいる。
晩秋や祈るばかりのこと多し  文福
  ミレーの絵のように祈るばかり。パリのテロの犠牲者やら、車で川へはまった一家心中の可愛そうな人達やら。
秋晴れて空に含みたる日の香り  七星
匂いのせ雲と交わり秋刀魚かな  拶木
身に入むや六十肩とは聞かざりし  露徒
  五十肩には参ったが六十になってもあるとは、<身にしみて大根からし秋の風 芭蕉>
稲架襖光る朝日に熱気球  耕泉
  熱気球はエンブロ―グ(球皮)の袋の中の空気をバーナーで熱して比重を軽くして浮力で上昇。
純朴さトゲで隠した栗美人  灰虹
  栗美人という焼酎はあるが栗美人は灰虹さんの造語?
目覚めれば霜月丑三つ重き夜具  文福
  ゲゲゲの妖怪にでも襲われたか、霜月丑三つどき(丑の刻を三つに割ったその三番目の刻)に突然布団をはねのけ飛び起きたのだ。そういえば鬼太郎も冥府へ旅立ってしまったが。

秀句三選

入選七句

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