第91回 2016年3月

句評     村野 太虚
しみじみと穀実を晒す蜆かな  露徒
  <からみ>を漢字で書くことでしじみの実体と存在感を表出。味噌汁にされるとほんとうにしじみどもは殻も実もあられもなく(晒し)ている。  

眉掃草→一人静とも、吉野静とも。
  センリョウ科の多年草。白いブラシを思わせるような小さな山野草、高さは花時10~15センチ。その可憐さから静御前の名をとって吉野静とも。眉掃はおしろいを塗ってから眉を掃きはらうための小さなハケ。

眉掃草一途というはあはれなり  文福
   静御前は吉野で義経とわかれ、まもなく鎌倉政権にとらえられ頼朝、政子の前へ引き据えられて舞いを舞う。(しずやしずしずのおだまきくりかえし、むかしをいまになすよしもがな・・・) 一途というはあわれあわれ。
駆け落ちは死語となりけり眉掃草  露徒
   近松の浄瑠璃の義理人情の江戸時代ではあるまいし、平成のきょうび駆け落ちの話など聞いたこともない、という意味か。
義経の鎧はこぶり眉掃草  三虚
   吉野の山に展示されている義経の鎧をみるとその小兵ぶりがわかる。京にあったときお公家さんを気取って眉を掃いたり。
春の夜の寝床のうへの糸電話  靑隹
  親と子の対話か。子も2~3才くらいか。子と子の対話か。春の夜の可憐な糸電話。
矢車と旗竿唸る鳶高き  秋水
  ちかごろ威勢のよい矢車!秀句
矢車や優しさひとつからまわり  文福
  フウ天の寅さんはいつも優しい。いつもカラ廻りしている

秀句三選

入選七句

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