第92回 2016年4月

句評     村野 太虚
首筋に壁蝨の歯跡や夏来る  露徒
  壁蝨→ダニ。ああ、夏がきたのだなあ。この首すじをやられたことよ。 ケダニ、イエダニ、ハダニ等種類が多い。足は8本、1ミリほどの大きさか。動物の血を吸う嫌われ者。転じて“町のダニ”など人にきらわれる形容に使われる。<切られたる夢は誠か蚤の跡 其角>  

卯の花腐し
  卯の花の盛りで卯の花をくさらせるようにしとしとと降りつづける雨。春雨と梅雨の中間の霖雨で古くからある季題。

卯の花腐し麻酔苦しピリピリピ  特許
   歯科へでかけた。麻酔はかけれどピリピリくる痛さ。卯の花腐しのじとじと雨のおかげでなおさらしくしく痛む。
姿見の曇る卯の花腐しかな  三郎
春のどか雷山は雲が湧く  淡雪
  雷山(いかづちやま)の名ものどか。ここから湧いてくるもくもく雲はなおのどか。
子規おもい咳のくるしさ花鎮め  庭慈
  <へちま咲いて痰のつまりし仏かな 子規>
山笑ふ待ちわびし日の短さや  ろんど
卒業を終えた参道セビア色  拶木
坂道で瞳に映る光る海  苑葉
麗かや声に日の射す安来節  露徒
  声に日の射す- が絶妙。
公園のぶらんこに乗る青嵐  文福
  省略の妙。
おん柱写楽三人そらを飛ぶ  三郎
  奴 江戸兵衛たちが目をカッと開いてとんでゆく。
サボテンのふてぶてしさを愛でてをり  文福
  このさぼてんは自分だ。自分直視。こわいものはないぜよ。

秀句三選

入選七句

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