第93回 2016年5月

句評     村野 太虚
老鴬にテンポ合わざる時鳥  穭
  老鴬→春すぎて鳴くウグイス。晩鴬、残鴬。
ホトトギスがてっぺんかけたか ほっちょんかけたかと鋭く夏を唄っているのに、まのびした残鴬がのんびり春の唄をうたってもテンポがあわない。 

夏木立
  「、、ことに俳諧時代になって好まれるようになった。いかにも夏らしく木々の生気盛んなイメ―ジを伴っているからだろう、、、。」健吉
<まずたのむ椎の木もあり夏木立  芭蕉>

夏木立回廊続く東漸寺  空飛
   関東の巨刹である。鬱蒼とした夏木立にかこまれているのだ。
閃々と漆黒分かつ夏木立  秋水
坂道にスリップの跡夏木立  露徒
葭簀茶屋氷の音もはこばるる  三郎
  貴船川にかかる葭簀の茶屋。硝子鉢に氷の音もゆらしながら仲居さんは夏料理をはこんでくる。
ひねくれの筍盛りて無人店  露徒
  無人店が効いて秀抜
三尺寝今年はどこよ茣蓙さがす  庭慈
  ひるねの茣蓙をどこへおこうか。
嘘つけぬ泰山木は揺れぬ花  文福
  どんな時にもどっしりしているのだ。
夕凪や人恋くらげ刺しにくる  三郎
  くらげも孤独。人が恋しいのだ。
間隙を風走りをり夏木立  文福
  声に日の射す- が絶妙。
公園のぶらんこに乗る青嵐  文福
  「生気さかん」な夏木立であることよ。

秀句三選

入選七句

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