第95回

句評     村野 太虚
面影を集めてしばし盆座る  露徒
  盂蘭盆に苧穀を焚いて御先祖さま達やらの魂祭をする。盆茣蓙に座っておればお香の煙や溝萩のあたりいろいろの貌があつまってくる。なつかしい面影を呼び起こしこうして座っているのだ。

新涼
  新涼は秋になってから立つ涼気である。俳諧では「涼し」といえば夏である。夏は最も涼しさが願わしい季節だからで、新涼は秋になって「やっと秋らしくなりました」といいかわせる季節の涼しさを指していう。<秋涼し手毎にむけや瓜茄子 芭蕉><皆去って新涼ひとつ橋の上 東川>(健吉)

新涼や菜も煮魚も食べつくし  秋水
新涼や葛なめらかに城下町  文福
  すずしげな気品の高い城下町だ。
新涼の襟足濡れし木々の陰  空飛
新涼や鈴奏でゆく熊の沼  三郎
  カラテで大熊を撃退した人の話が最近あった。指を熊の目に突っ込んだとのこと。熊よけの鈴はかえって人間がきたと近寄ってくるという説もある。
甚平やさがす眼鏡は眉の上  三郎
炎天の雀靜かに巣を守る  特許
  この雀、ヤキトリになるかも。
落下して山女の影もなかりけり  穭
  山女はサッと逃げた。
キラキラと風鈴が舞う昼下がり  栗鼠
風鈴に居合いの気あり武家屋敷  文福
  知覧あたりの武家屋敷にちがいない。すずやかな美しいまちなみだ。この地から特攻の若者たちが飛び立っていった。

秀句三選

入選七句

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