第98回

句評     村野 太虚
一声の谺のゆきき神還る  露徒
  「今帰ったぞー」 神錆びた声が国の山谷に轟き、出雲から村里へみことが還ってきたことが知らされる。また山山に神の声がこだましていったりきたりする。出雲からの土産も多いにちがいない。

神還る
  神無月を中心に陰暦九月晦日を「神送り」十一月朔日を「神迎え」といって祭事がおこなわれてきた。神還りの日、神社に参篭して村里にふたたび神のもどってきたことを祝うのである。

神の留守火星の渓へ水汲みに  三虚
石段の擦れる年月神迎え  空飛
  宮の石段を擦ってこの年月、神迎えをしてきました。
神還る頃合いを見て宝クジ  秋水
  神頼み。オット 1億円あたるか。
神還る下々日日に変りなし  秋水
  こちとらの生活にはかかわりござんせん。
雲海の彼方は日本神還る  文福
  我は神!今、雲海をわけてはるばるノルマンデイから還ってきたぞよ。
船でしかゆけぬ秘湯へ水鳥と  特許
  秘湯、大牧温泉へでかけた。船でしかゆけぬ秘湯なのでお伴は水鳥だけ。
しぐれきて鯉よりそうや坂の宿  露徒
  鯉も人もよりそう風情。しぐれの坂の宿。
冬うららパンの香りと街歩く  文福
  こうばしいにおいが街じゅうに。しあわせな人だなあ。世界中どこへでも旅行できて。どんな街でも香りさんとも歩けて。

秀句三選

入選七句

第25回  第26回  第27回  第28回  第29回  第30回  第31回  第32回
第33回  第34回  第35回  第36回  第37回  第38回  第39回  第40回
第41回  第42回  第43回  第44回  第45回  第46回  第47回  第48回
第49回  第50回  第51回  第52回  第53回  第54回  第55回  第56回
第57回  第58回  第59回  第60回  第61回  第62回  第63回  第64回
第65回  第66回  第67回  第68回  第69回  第70回  第71回  第72回
第73回  第74回  第75回  第76回  第77回  第78回  第79回  第80回
第81回  第82回  第83回  第84回  第85回  第86回  第87回  第88回
第89回  第90回  第91回  第92回  第93回  第94回  第95回  第96回
第97回