第2回グランプリ決定
「俳句にチャレンジ」の第2回グランプリが決定した。平成21年10月から平成22年9月に投稿された俳句のなかから、秀句36句、入選84句が選ばれ、その中から見事グランプリに輝いたのは、こころさん。準グランプリは2句にはトンボさん、左近さん。昨年グランプリの利涼さんは、審査員特別賞1句となった。
  • ◆グランプリ
          ポンと打ちひとり頷く西瓜かな   こころ(奈良)
  • ◆準グランプリ
          寒椿雀泊れと雪落とす   トンボ(高知)
  • ◆準グランプリ
          春暁のテーブルにあるパスポート   左近(長野)
  • ◆審査員特別賞
          最澄と琵琶湖に浮かぶ秋の空  利涼(福岡)
  • ◆年間入選5句
          茶室みな開け放たれし梅の寺     那み(神奈川)
          秋風と布橋渡る白声明     淡雪(東京)
          秋の夜のアルフォンソノ琥珀色     如楽女(東京)
          縁日の夫婦狸や鰯雲     紅花(京都)
          初蛍夜風に添ひて飛びにけり     凌雲(鳥取)

総 評

重量感と深みが増してきた   村野 太虚

 エクステリア業界俳句、第二回グランプリ受賞者と受賞句、そして準グランプリ、審査員特別賞、入選句がきまりました。昨年と比較して総体に一段の重量感と深みが増してきて、「エクステリア俳壇」が安定して参りました。こころからお慶び申しあげます。

さてグランプリ受賞句
 ポンと打ちひとり頷く西瓜かな こころ
 作者「こころ」さんは昨年すでに「リハビリの石段軽し初詣」で登場していましたが、今回は秀句欄に前後七回も掲載されるという好調ぶり。「頭から焼酎浴びし実梅かな」など軽快な句にまじって「老いし母湯けむりに見る山桜」などもあります。
 「西瓜」の「ポンと打ち」「ひとり頷く」にはおそれいりました。たしかに西瓜を手にするとポンと打ちたくなる。西瓜には打ちたくなる愛嬌がある。またその音を聴いて、一人頷くのです。この「無意識の表情」を軽妙にキャッチしています。

準グランプリ賞
 寒椿雀泊れと雪落とす トンボ
 寒椿が雀に泊ってゆけという。寒椿もさびしいのでしょう。ふっくらと肥えている雀の気をひいて雪までおとした。お伽のような、また夢のようにやさしい世界です。「寒椿」と「雪」は季重りですが寒椿が主季語で雪はモノとして捉えましょう。美しく愉しい句です。「霜はしら日の出迄の覚命かな」は「おぼつかな」とこちらが勝手に読んで、面白いと思った句もありました。

準グランプリ賞
 春暁のテーブルにあるパスポート 左近
 春暁がよいと思いました。企業戦士と春暁のパスポート。同じ作者で「声かけしばかりに打たれ水鉄砲」も水鉄砲の気合をとらえていて秀逸です。

審査員特別賞
 昨年、グランプリ受賞の利涼さん。今年も重厚な句を頂きました。圧倒的な存在感で六句、六回秀句欄に。
 最澄と琵琶湖に浮かぶ秋の空 利涼
 秀冷の湖へ大師と舟で出て叡山を見上げている、という幻想の詩。最澄は近江の国、古市郷(大津)の生まれで俗名を広野といった。かくて利涼さんの琵琶湖の秋はいよいよ澄みきって心も澄み渡るのである。
 「走馬灯刹那のうちに里帰り」の一句が里帰りのあわただしさと哀愁を、季語「走馬灯」によって痛切適確に描写されている。そのほか「悟り」を表現された句がきわだった特徴であり凡人に忖度しがたいところもある。

秀句3選(10月~9月)

  • 10月
  • 彼岸花彼岸に至り円かなる 利涼(福岡)
  • 秋の夜のアルフオンソノ琥珀色 如樂女(東京)
  • 縁日の夫婦狸や鰯雲 紅花(京都)
  • 11月
  • 最澄と琵琶湖に浮かぶ秋の空 利涼(福岡)
  • 秋風と布橋渡る白声明 淡雪(東京)
  • ふところに野菊を折りて君を待つ トンボ(高知)
  • 12月
  • 箒目や見上げる天の紅葉かな 利涼(福岡)
  • 柿うましなんと長生きしたことよ 那み(神奈川)
  • 渓谷の早瀬紅葉も浮き沈み トンボ(高知)
  • 1月
  • 寒椿雀泊れと雪落とす トンボ(高知)
  • 反省と希望が混じる年の暮 こころ(奈良)
  • 大みそか見上げた冬空大河かな 向日葵(神奈川)
  • 2月
  • 裏返り吹かれ木の葉の歎異抄 利涼(福岡)
  • 霜ばしら日の出迄覚命かな トンボ(高知)
  • 幽霊の軸掛けている三が日 緑舟(大阪)
  • 3月
  • 茶室みな開けはなたれし梅の寺 那み(神奈川)
  • 干鰈吊るされてをり北空港 露徒(東京)
  • 休耕田長方形の春が来る 左近(長野)
  • 4月
  • 風のまま散るか残るかたんぽぽよ わさび(鳥取)
  • 何もかも捨てて冬木となりにけり 左近(長野)
  • 松明に燃えては消ゆる紅き頬 こころ(奈良)
  • 5月
  • 花筏流れに添いて在るがまま 利涼(福岡)
  • 老いし母湯けむりに見る山桜 こころ(奈良)
  • 故郷を素足になりて懐ふ春 緑舟(大阪)
  • 6月
  • パソコンを閉じて味わう新茶かな こころ(奈良)
  • 手に取りし秘めた想いは野薊か トンボ(高知)
  • 春暁のテーブルにあるパスポート 左近(長野)
  • 7月
  • 頭から焼酎浴びし実梅かな こころ(奈良)
  • 初蛍夜風に添ひて飛びにけり 凌雲(鳥取)
  • なにやらを捌いている夏屋台 緑舟(大阪)
  • 8月
  • 走馬灯刹那のうちに里帰り 利涼(福岡)
  • 宵山にひと際高き子は浴衣 こころ(奈良)
  • 蛍火や誰か尋ねてきたような 山法師(宮崎)
  • 9月
  • ポンと打ちひとり頷く西瓜かな こころ(奈良)
  • 声かけしばかりに打たれ水鉄砲 左近(長野)
  • ねこじゃらし跳ねてかかとをくすぐれり 凌雲(鳥取)

第1回グランプリ