句評 村野 太虚
日輪の色盗みたるのうぜん花 露徒
<盗もう>とする色は日輪である。虚空に耀く炬火、太陽に恋し、そし日輪に近づきたい。<凌霄→そらをしのぐ>、霄→そら。橙色から真紅の大きく美しい花。のうぜんかつら。つる性落葉樹。大空高く勢い強く咲く丈夫な花木。花言葉は栄光 名声。のうぜんかつらの豪奢なありようは<日輪>にこそ映える。
暑い 秋暑し 涼し
連俳の季語では、春は<温か>、夏は<暑し> 秋は<冷ややか>、冬は<寒し>とする。但し<涼し>も夏。<暑い>というのは客観的季語。<涼し>は暑い時人びとが最もほしいもので、いわば主観的季語。<咳暑し茅舎小便又漏らす 茅舎> <木の枝の瓦にさはる暑さかな 龍之介> <禅寺は涼しきものと思いきし 虚子>
秋暑しは立秋後の暑さ。残る暑さ。<朱を入れる宿題の嵩秋暑し 由美子>
神々の降りし岩戸や秋暑し 山法師
山法師さんの宮崎の天の岩戸、大神をひきだしてのウヅメノミコトの乱舞。秋暑し。
冷房下蒸し暑さを体感せず 肴
その通りですが、冷房の説明だけにおわらずになにかの感動を見つけてくださいね。ちいさくても自分のほんとうの感動は人をも感動させてくれます。
<冷房や言葉やさしく戻りきぬ> <冷房や芭蕉は草鞋ばきの旅 緑郎>
座っていても横になっても暑い朝 雅柳
夏本番木陰が恋しい暑さかな 肴
<嘴(はし)開けて鴉も暑きことならむ 木国>
真夏日といわれるだけで暑くなる 安心院
その通りかもしれませんね。でも そこから少しだけ頑張ってみてください。
<暑きゆえものをきちんと並べをる 綾子>
暑い夏水分摂取を忘れずに 安心院
私は起きがけ1杯、午前1杯、昼食後1杯、午後1杯、寝る前1杯をこころがけております。
<石も木も眼(まなこ)に光る暑さかな 去来>
ほしかったもの自問して遠花火 文福
ほんとうに、あのときほしかったのはなんだったろう。励ましの言葉か、愛のささやきか。遠くに花火があがっている。なんだかこころがゆすられてくる。<遠花火>が絶妙。